「ダンボールの準備もできたし、新しいオフィスのレイアウトも決まった。これで引越しの準備は万全だ」……もし経営者や総務担当者であるあなたがそう思っているなら、非常に危険です。

オフィス移転という巨大なプロジェクトにおいて、デスクやPCといった「物理的なモノの移動」は、全体のたった20%に過ぎません。残りの80%を占めるのが、法務局・税務署・年金事務所・労働基準監督署などへ向けた「膨大な法的手続きと届出」の山です。

この書類手続きを後回しにするとどうなるでしょうか。「本店移転登記」を忘れて過料(罰金)を請求される、社会保険の住所変更が遅れて社員の健康保険証が使えなくなる、税務署への届出漏れで延滞税が発生するといった、企業の信用を根底から揺るがす重大な事態に直結します。

ミツバチ引越センターは、京都・大阪を中心に数多くの企業移転を「裏側の事務手続き」から支えてきました。本記事では、多忙な総務・経理担当者が絶対に漏らしてはいけない法的手続きを、提出先別・時系列順に1万文字以上の完全保存版として徹底網羅しました。このチェックリストを片手に、安全確実な移転プロジェクトを完遂してください。

第一章:【全体像】いつ、どこへ行く?オフィス移転の届出タイムライン

まずは、どのタイミングで何のアクションを起こすべきか、全体のスケジュール(期限)を俯瞰します。移転日を「Xデー」とした時、手続きは半年前からスタートしています。

移転の6ヶ月前〜3ヶ月前

【現在のオフィスの解約予告】: 賃貸契約書を確認し、オーナーまたは管理会社に「解約・退去通知」を出します。一般のオフィスビルは「6ヶ月前予告」が基本です。
【インターネット・電話回線の手配】: 光回線の新規引き込みには数ヶ月かかる場合があります。すぐNTT等に新居の回線手配と旧居の撤去工事を予約します。

移転の1ヶ月前〜2週間前

【取締役会・株主総会の決議】: 本店移転に関する社内決議を行い、議事録を作成します(登記に必要)。
【郵便物の転送届】: 郵便局まはたWEB(e転居)で法人宛の郵便転送手続きを行います。
【消防署への届出】: 新オフィスのレイアウトが決まったら、消防計画の変更等を管轄の消防署に相談・提出します。

移転日当日(基準日)

物理的なお引越しと、ネットワーク機器の開通テストを行います。ここから法律上の「期限カウント」がスタートします。

移転から「5日以内」

【年金事務所】: 健康保険・厚生年金保険の事業所所在地変更届。すべての期限の中で「最も短い」ため、移転前から書類を作成しておくのが鉄則です。

移転から「10日以内〜14日以内」

【法務局】: 本店移転登記(14日以内)。全手続きの「根幹」です。
【労働基準監督署】: 労働保険の所在地変更届(10日以内)。
【ハローワーク】: 雇用保険の事業主実態変更届(10日以内)。

移転から「1ヶ月以内・速やかに」

【税務署】: 異動届出書、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書など。
【都道府県税事務所・市町村】: 法人住民税や事業税に関する異動届。

第二章:【最重要】すべての起点となる「法務局」への本店移転登記

企業の「戸籍」とも言える商業登記簿。その住所を書き換える「本店移転登記」は、各種役所や銀行の手続きを行う上で必要不可欠な「謄本(登記事項証明書)」を取得するための最優先ミッションです。

⚠️ 登記を怠ると「過料(罰則)」が科されます

会社法により、本店を移転した場合は「移転日から2週間以内」に登記をしなければならないと定められています(会社法第915条第1項)。これを過ぎると、代表者個人に対して数万円〜100万円以下の「過料(いわゆる罰金のようなもの。前科はつきません)」の支払命令が裁判所から届くリスクがあります。

管轄の法務局が「変わるか・変わらないか」で費用と手間が激変する

本店移転登記は、移転先が同じ法務局が管轄しているエリア内か、全く別のエリア(管轄外)に出るかによって、手続きが大きく変わります。

  • 管轄内での移転(例:京都市中京区から京都市下京区への移転)
    提出する申請書は1通で済みます。必要書類は「本店移転登記申請書」「株主総会議事録または取締役会議事録」「委任状(司法書士に頼む場合)」。かかる税金(登録免許税)は「3万円」です。
  • 管轄外への移転(例:京都市から大阪市への移転)
    旧住所を管轄する法務局と、新住所を管轄する法務局の「両方」に申請を出す必要があります(※書類の提出窓口は旧法務局で一括して行えます)。登録免許税もそれぞれの管轄でかかるため、合計「6万円」(3万円×2回分)が必要になります。さらに、新しい管轄に出るため「同一商号の調査」なども慎重に行う必要があります。

登記申請後、新しい登記簿が発行されるまでに1週間〜10日程度かかります。この新しい登記簿謄本が発行されないと、次の「税務署」や「銀行」の手続きに進めないため、移転後1日でも早く登記申請を行うのがプロジェクト管理の要となります。

第三章:税務署・都道府県・市町村への「税金関連」の届出

法務局での登記が完了し、新しい登記簿謄本が手に入ったら、すぐに税金に関する役所に異動届を提出します。これを忘れると、重要な税務書類が旧住所に届き続け、最悪の場合は税務調査時のトラブルや青色申告承認の取り消しリスクに繋がります。

提出先 提出する書類の名称 期限・タイミング 必要なもの・添付書類
税務署(国税) 異動届出書
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
異動後、速やかに(実質1ヶ月以内) 法人番号がわかるもの。
※現在、登記簿謄本の添付は省略可能になりました。旧管轄の税務署へ提出。
都道府県税事務所(地方税) 異動届出書(事業税・都道府県民税の変更) 移転後なるべく早く(都道府県により10日〜1ヶ月等異なる) 新しい登記簿謄本のコピー、定款の写し
市町村役場(地方税) 法人設立(設置)異動等申告書 同上 新しい登記簿謄本のコピー、定款の写し
※東京23区内の移転なら都税事務所のみでOK。

※最近では、e-Tax(国税電子申告・納税システム)やeLTAX(地方税ポータルシステム)を活用すれば、税務署と地方自治体への届出をオンラインで一括送信することが可能です。顧問税理士に移転の数ヶ月前から共有し、電子申請を代行してもらうのが最も確実です。

第四章:年金事務所・労基署・ハローワークへの「労務関連」の届出

従業員の生活と直結する「社会保険(健康保険・厚生年金)」と「労働保険(労災保険・雇用保険)」。これらの手続きは期限が非常に短いのが特徴です。

1. 年金事務所(社会保険)

  • 名称: 健康保険・厚生年金保険 適用事業所所在地・名称変更届
  • 期限: 移転後「5日以内」(最も急を要します)
  • 提出先: 管轄の年金事務所(管轄外に移転する場合は、移転前の年金事務所へ提出)
  • 添付書類: 法人登記簿謄本のコピー(コピー可)

2. 労働基準監督署(労災保険)

  • 名称: 労働保険 名称、所在地等変更届
  • 期限: 移転の日の翌日から起算して「10日以内」
  • 提出先: 移転後の新住所を管轄する労働基準監督署
  • 注意点: 就業規則を変更した場合(勤務地が本則と異なる等)は、就業規則の変更届も合わせて必要になる場合があります。

3. 公共職業安定所・ハローワーク(雇用保険)

  • 名称: 雇用保険 事業主事業所各種変更届
  • 期限: 移転の日の翌日から起算して「10日以内」
  • 提出先: 移転後の新住所を管轄するハローワーク
  • 順番の注意: 事前に上記の労働基準監督署に提出し、受付印を押してもらった「労働保険変更届」の控えを持参する必要があります。必ず「①労基署 → ②ハローワーク」の順番で回りましょう。

第五章:警察署・消防署への届出(見落としによる稼働停止リスク)

オフィスの安全やインフラに関する法律をクリアしていないと、移転後に「使用停止命令」などの厳しい行政指導を受けることがあります。

消防署への届出(命とビルを守る手続き)

  • 防火対象物使用開始届出書: 新しくオフィスに入居する際、「使用開始の7日前まで」に新住所を管轄する消防署へ提出します。オフィスの平面図や立面図、室内仕上表などを添付し、「スプリンクラーの位置は適切か」「感知器は届いているか」などの消防法適合チェックを受けます。もし内装工事で天井までパーテーションを立てており、スプリンクラーが足りないと判断された場合、追加の消防設備工事が終わるまで「オフィスとしての使用を禁止」されるケースがあります。内装業者を交えて、着工前に管轄消防署に「事前相談」に行くのが絶対の鉄則です。
  • 防火・防災管理者選任届: 一定規模以上のオフィス(テナントを含むビル全体の収容人数が要件に満つ場合)では、防火管理者の有資格者を選任し、届け出る必要があります。

警察署への届出

  • 自動車保管場所証明書(車庫証明): 営業車(社用車)がある場合、移転日から「15日以内」に新住所を管轄する警察署で車庫証明を取り直し、その後運輸支局(陸運局)で自動車検査証(車検証)の住所変更を行います。これを怠ると、次回の車検が受けられなくなります。
  • 道路使用許可申請: 引越し当日、トラックを公道に長時間停めて荷物の搬出入作業を行う場合、管轄警察署に道路使用許可を取らなければなりません(通常は引越し業者であるミツバチが代行して手配します)。

第六章:民間・インフラ・取引先・許認可の住所変更ラッシュ

役所関連が終わったら、今度は日々の業務を回すための民間インフラの手続きを一気に進めます。これを漏らすと、「入金ができない」「決済が下りない」という業務停止リスクに直結します。

  • 金融機関・銀行口座: 法人名義の銀行口座の住所変更。新しい登記簿謄本と法人実印、銀行印を持参して窓口で行います。融資を受けている場合は、担当者へ別途報告が必要です。
  • クレジットカード会社・リース会社: 法人カードや、複合機・社用車のリース契約先への住所変更。請求書が届かなくなり、支払いが滞って信用情報に傷がつく事故が多発しています。
  • 郵便局(e転居): 旧住所宛の郵便物を新住所へ1年間無料で転送してくれます。窓口に登記簿謄本と社員証・名刺を持参するか、スマホからでも登録可能です。
  • 各種Webサービス・SaaS・クラウド: AWS、Google Workspace、会計ソフト、ドメイン管理会社、名刺管理サービスなど、月額課金している全サービスの登録住所と請求書送付先をアップデートします。
  • 業界特有の許認可(該当企業のみ): 「建設業許可」「宅地建物取引業免許」「古物商許可」「有料職業紹介事業」「飲食業(保健所)」など、特別な許認可を得て営業している場合、移転にあたり厳格な期日内で監督官庁(都道府県庁や警察署など)に変更届を出す義務があります。許可証の再発行が必要なケースもあります。
  • 取引先・顧客への挨拶状・DM: 移転の1ヶ月前には、関係各所に「移転のご案内」を郵送またはメールで送信します。請求書や納品書の書式が変わる場合は、経理部門から取引先の経理部門へ「住所変更に伴う登録マスターの更新依頼」を確実に行います。

★オフィス移転の手続き完全サバイバルQ&A(充実の40項目)

「間に合わなかったらどうなる?」「誰に頼めばいい?」現場の総務担当者が抱える不安やすべての疑問に、一問一答形式で答えます。

Q1: 手続きが多すぎて把握できません。誰かに丸投げできますか?
税務署は「税理士」、法務局は「司法書士」、年金と労務は「社会保険労務士(社労士)」がそれぞれ専門の独占業務として代行してくれます。顧問契約を結んでいる士業がいれば、すべて一任するのが最も安全で確実です。

Q2: 引越し業者のミツバチに、この役所の手続きも代行してもらえますか?
引越業者が自ら法務局や税務署の書類を作成・提出することは、法律(非弁行為や税理士法違反)で固く禁じられています。ただし、ミツバチ引越センターは優秀な司法書士や社労士と提携しているため、「信頼できる専門家チーム」をワンストップでご紹介し、移転プロジェクトの枠内で強力にサポートすることは可能です。

Q3: 本店移転登記の「2週間以内(14日以内)」を過ぎてしまったらどうなる?
数日程度の遅れであれば、法務局で「遅延理由書」を出すことなく受理されることがほとんどです。しかし、数ヶ月〜年単位で放置すると、裁判所から代表者個人に対して数万円から数万円の「過料」の支払命令が下ります。必ず急いで申請してください。

Q4: 年金事務所の「5日以内」に間に合わない!登記簿謄本がまだ取れないですが?
登記の完了には1〜2週間かかるため、5日以内に謄本を添付するのは物理的に不可能なケースが多々あります。その場合は、先に年金事務所へ「所在地変更届」のみを提出し、「登記簿謄本は登記完了次第、後日追加で提出します」と窓口で伝えれば、ほとんどの年金事務所で柔軟に対応してもらえます。

Q5: マイナンバーカードを使った「オンライン手続き(法人ワンストップサービス)」は便利?
登記完了後であれば、国税庁の「e-Tax」等を通じて税金・社会保険の手続きを一括で行えるシステム(法人設立ワンストップサービスの変更機能等)が整備されつつあります。ただし、代表者の電子証明書が必要であり、システムの設定に手間取ることが多いため、ITに不慣れな場合は紙面での郵送や窓口提出の方が結果的に早いこともあります。

Q6: 郵便の「転送届(e転居)」の効力は何年間ですか?
届出日から「1年間」です。1年経過すると旧住所宛の郵便は差出人に戻されてしまいます。もし取引先が1年後も旧住所に請求書を送ってくるリスクがあるなら、期限が切れる前に再度、郵便局で転送届を「更新(再提出)」する必要があります。

Q7: 消防署への「使用開始届」を出さないとバレる?
バレます。消防署は定期的にビルの立入検査(査察)を行っており、無届で内装を変更したりテナントが入居していることが発覚すると、厳しい行政指導を受けます。万が一火災が起きた際に「無届の違法状態」であった場合、経営者の刑事責任が問われる大事件になります。

Q8: 税務署への届出を忘れると延滞税が付くって本当?
本当です。異動届を出していないと、税務署からの納税通知書(納付書)が旧住所に届き、企業側は「届いていないから払わなかった」という言い訳が通用しません。結果として納付期限を過ぎ、高い率の延滞税・無申告加算税を課せられる最悪のシナリオに陥ります。

Q9: 「登記上の住所」と「実際の業務を行うオフィス」を別にしてもいいの?
法律上は可能で、例えば「登記は社長の自宅のままにしておき、オフィスだけを借りて業務を行う(本店以外の事業所)」という運用をしている企業も多いです。その場合、本店移転登記は不要になり大幅に手続きが減りますが、税務署等へは「新たな事業所の設置」として届出が必要になります。

Q10: 労働基準監督署とハローワーク、行く順番で失敗したくない。
【絶対に、労働基準監督署が先】です。労働基準監督署で受領印を押してもらった「名称、所在地等変更届」のコピー(控)を持って、ハローワークに行くというルールになっています。逆に回るとハローワークで受理してもらえません。

Q11: 「支店(営業所)」を新しく出すだけの場合、本店と同じ手続きが必要?
法務局での「支店設置登記」が必要になります。税金や労務関連も、「新たな事業所の開設」として税務署・年金事務所・労基等への届出が必要です。本店移転よりは軽微ですが、各役所への報告義務は同様に生じます。

Q12: 引越しの当日、「道路使用許可」は自分たちで警察に取りに行くの?
通常は、ミツバチ引越センターのような引越し業者が「作業計画」として代理で管轄警察署に申請・取得します。ただし、申請には手数料(数千円)がかかり、許可が下りるまでに中1〜2日を要するため、直前の手配はできません。

Q13: 古物商許可を持っている会社が移転する時の注意点は?
古物営業法に基づき、移転の「14日前まで」に事前の届出を、経由警察署長(公安委員会)に対して行う必要があります。これは「事後」の届出では間に合わず、違反すると罰則や営業停止の対象となる極めて厳しいルールです。

Q14: 社用車(営業車)のナンバープレートは変えなきゃダメ?
管轄の運輸支局・自動車検査登録事務所が変更になる場合(例:京都ナンバーのエリアから大阪ナンバーのエリアへ移転)、車庫証明を取り直した上で、車自体を陸運局に持ち込んでナンバープレートを変更・封印する作業が必要です。複数台あると1日がかりになります。

Q15: 印鑑証明書や登記簿謄本は、移転後に何通くらい取得すべき?
銀行、クレジットカード、リース会社、各種役所への提出用を含め、移転直後は「10通〜15通程度」はまとめて取得しておくとスムーズです。今は法務局の窓口だけでなく、オンライン請求でオフィスに郵送してもらうことも可能です。

Q16: 代表者の「自宅住所」も引越しした場合、追加の手続きはある?
代表取締役の個人の住所は、法人の商業登記簿に記載されているため、個人の引越しであったとしても「代表取締役の住所変更登記(登録免許税1万円)」を法人として2週間以内に行う義務があります。本店移転と同時に行うと効率的です。

Q17: 旧オフィスの原状回復工事が長引いて、住所が2つある期間の扱いは?
法的には、法務局での登記にかかれた「本店移転日(株主総会・取締役会等で決議した移転日)」が一つの基準点となります。旧オフィスで片付け作業をしていても、対外的な法的住所は登記上の新住所に切り替わります。

Q18: 役所への書類に押す印鑑は、「旧住所のゴム印」を訂正して使ってもいい?
二重線で消して新住所を手書き(または新しいゴム印を押印)し、法人実印または訂正印を押せば受理される役所がほとんどです。しかし、見栄えや信用性の観点から、早急に新しい住所のゴム印(社判)を作り直すのが一般的です。

Q19: 法人名義の携帯電話(スマホ)の住所変更を忘れると?
通信キャリアから重要な契約書類や、万が一の未納通知書が届かなくなります。また、法人スマホの新規契約・機種変更をする際に、最新の登記簿住所と契約情報が一致しないと手続きを拒否されるため、早めにキャリアの法人窓口に連絡しましょう。

Q20: オフィスの「防火管理者」が変わる場合の手続きは?
移転を機に、旧オフィスで防火管理者だった者が退任し、新たな社員を選任する場合、消防署へ「防火・防災管理者選任(解任)届出書」を提出します。有資格者が社内にいない場合は、早急に消防署の講習(1〜2日)を受けさせる必要があります。

Q21: 「雇用保険被保険者証」は、社員全員分新しく発行される?
会社の住所が変わっても、社員一人一人が持っている雇用保険被保険者証や、年金手帳そのものを再発行・書き換える必要はありません。会社側の登録マスターが役所で変更されるだけですので、社員に負担はかかりません。

Q22: 社員の「健康保険証」はどうなる?回収されるの?
社会保険の事業所所在地変更届を年金事務所に出すと、後日、会社名義と新住所が裏面に印字してあるタイプの保険証に関しては、新しいものが協会けんぽから会社にまとめて送られてきます。旧保険証は会社で回収し、年金事務所に返納します。(※マイナ保険証への移行に伴い、運用は変更されつつあります)

Q23: 賃貸の「保証会社」への住所変更は必要?
旧オフィスを退去したのだから旧保証会社には関係ないと思いがちですが、「退去・解約」の連絡が遅れると、退去済みなのに翌月の保証料請求や自動引き落としが作動してしまう事故があります。管理会社だけでなく保証会社への解約手続きも忘れずに。

Q24: 名刺を作るとき、登記前でも新住所を刷っていいの?
問題ありません。業務上の実態が新住所に移っていれば、登記手続きが完了していなくても、名刺やホームページの住所を先行して新住所に書き換えて営業活動を行うことは完全に合法であり、実務上当たり前の流れです。

Q25: ビルの「ごみ収集(事業系一般廃棄物)」の手前はどうする?
ビル管理会社が一括で民間業者に委託している場合は、管理会社と契約するだけです。しかし、自社でゴミ集積所・処理業者を見つけなければならない小さなビルの場合、移転前に京都市や大阪市が認可する「産廃・一廃業者」と個別に収集契約を結ばないと、移転初日からゴミが捨てられずパニックになります。

Q26: 引越しの挨拶状(案内状)は、メールだけで済ませて良い?
近年はペーパーレス化が進み、メールとWEB告知のみの企業も激増しています。しかし、金融機関、付き合いの長いVIP顧問客、役所関連には、礼儀として昔ながらの「圧着ハガキ」や「封書」を送るのがビジネスの暗黙のルールであり、信用を保つ上で推奨されます。

Q27: ホームページ(自社サイト)の住所変更を忘れがちな場所は?
「会社概要」のページは皆さん直しますが、「フッター(一番下の帯)」「プライバシーポリシーの事業者情報」「特定商取引法に基づく表記」「採用ページの勤務地」の4箇所は修正から漏れがちで、そこを見た顧客に混乱を与えます。

Q28: Googleマップ(Googleビジネスプロフィール)の住所変更は?
非常に重要です。移転後すぐにGoogleビジネスプロフィールの管理画面から住所変更申請を出します。変更を証明するために、新オフィスの看板の写真や、ハガキによる認証プロセス(Googleから新住所にPINコードが郵送される)が必要になる場合があります。

Q29: コピー機(複合機)の住所変更をしないとどうなる?
トナーの自動配送システムを利用している場合、旧住所にドカドカとトナーが届き続けます。また、保守点検のエンジニアが訪問できなくなります。移転の機械移設工事と同時に、メーカー窓口とリース会社への住所変更手続きを完了させてください。

Q30: 「就業規則」を変更する際、労基署への届出は必要?
要件を満たす会社(常時10人以上の労働者を使用)で、移転に伴い「就業場所」の記載を具体的に書き換える必要がある場合や、通勤手当の規定が変わる場合は、就業規則の改定手続きと、労働基準監督署への「就業規則変更届(社員代表の意見書添付)」の提出が義務です。

Q31: 京都の景観条例で、移転先の看板デザインに制約はある?
京都でオフィスを構える企業にとって避けて通れないのが厳格な「京都市屋外広告物条例」です。看板の色(彩度・明度)、面積、高さに厳しい罰則付きの制限があり、派手なコーポレートカラーが使えない場合や、設置の1ヶ月前までに市役所へ許可申請を出さなければならない場合があります。

Q32: 給与の締日・支払日が移転手続きと被った場合は?
銀行口座の住所・支店変更手続き中だと、ファームバンキング(ネットバンキングでの一括振込)のシステム登録に不具合が生じ、社員への給与振込が遅延する最悪のリスクがあります。移転月の給与振込は、経理と銀行の担当者で「絶対に止まらない手順」を事前打ち合わせしてください。

Q33: 法人名義のETCカードやガソリンカードの手続きは?
カード裏面に記載されている発行元(クレジット会社や協同組合)に住所変更届と、新しい登記簿謄本の写しを提出します。これを忘れると、更新カードが届かず、営業車が高速道路のゲートで突如足止めを食らう大惨事になります。

Q34: 株主への「本店移転の通知」は義務ですか?
会社法上、株主構成が社長1人等の非公開会社であれば問題になりませんが、複数の株主や外部投資家(VC等)が入っている場合、本店移転は重要な経営事項です。登記前に(または同時に)、全株主へ正式な「本店移転のご案内」を書面またはメールで通知するのがガバナンス上の常識です。

Q35: 旧オフィスに残置する不用品に「固定資産」が含まれる時の手続きは?
経理上の「固定資産除却」の手続きが必要です。移転で大量の古いデスクやPCをドンドン廃棄する場合、固定資産台帳と突き合わせて、「どの資産を廃棄したか」を正確に記録し、決算時の「固定資産廃棄損」として計上することで適切な節税効果が得られます。

Q36: 個人情報保護法に基づくプライバシーマーク(Pマーク)の対応は?
PマークやISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)を取得している企業は、移転時のセキュリティ対策(入退室管理や機密文書の廃棄ルート)が規定に準拠しているかの再評価が必要です。また審査機関に対して「事業所の所在地変更」の届出が必要になります。

Q37: 取引先から「預かっている機密資料」を運ぶ際の法的扱いは?
弁護士事務所やITシステム会社などで、顧客の極秘データ(裁判資料や設計図等)を新オフィスに移動させる場合、通常の引越し業者では「紛失時の青天井の損害賠償」に対応不可なケースがあります。「セキュリティ便(貴重品輸送)」を別途手配する等、情報漏洩防止措置の証明を手続きとして残す必要があります。

Q38: 「建設業許可」を他府県に移す場合、どうなるの?
都道府県知事許可(例:京都府知事免許)で営業していた建設会社が、大阪府に移転(本店移動)する場合、従来の知事免許は「廃業届」を出し、新たに「大阪府知事の新規免許申請」をゼロからやり直すという途方もない手間と費用(新規手数料)と審査期間がかかります。他府県への移転は許可証を持たない「空白期間」に注意してください。

Q39: 「胡蝶蘭(お祝いの花)」が届きすぎて置き場がない。どうすれば?
移転の事務トラブルで以外と多いのがこれです。通路を塞ぐと消防法違反(避難経路確保義務)になります。近年は、移転案内状に「誠に勝手ながら、祝花等につきましては謹んで辞退申し上げます」と一文を添え、あえて受け取らないエコな手続きを踏む企業も増えています。

Q40: もし移転の「手続きリスト」を無くしてパニックになったら?
落ち着いて、顧問税理士・社労士・司法書士へ「今日引っ越しました」と一本電話を入れ、何をいつまでに欲しいか指示を仰いでください。そこでの初期対応が、その後の致命傷(過料や滞納)を防ぐ安全網になります。もし専門家のツテが無い場合は、移転のプロであるミツバチにいつでもSOSを出してください。